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第七回『農業にかける想い』
![[写真 左/右]Bio Farm Midori代表:青柳美土里氏(あおやぎみどり)/ヴィンテージファーム農場長:萩野敏明(はぎのとしあき)](/interview/007/images/img_image01.jpg)
梅雨の晴れ間、強い日差しの中でたくましく農業に取り組んでいる2人。有機野菜とワイン醸造用ぶどう、栽培しているものは違うけれど、農業にかける想いは相通じるものがあったようです。
農業の道へ進むきっかけ

- 青柳:
- 特に農業に興味があったわけではないのですが、たまたま進学した大学が農業系の大学だったんです。北海道に校舎があり、ジャガイモ・サトウダイコン・小麦畑の土壌の研究をしていました。
大学卒業後は外食産業で2年間サラリーマン生活を経験しました。そのときに使用していた食材が、外国産や冷凍物ばかりでおいしい食材とは何か?と違和感を感じる毎日でしたね。
あるとき両親が入院しまして、山梨に帰ってくる決意をしました。そのとき、山梨に帰るならおいしい野菜を育てたいという想いがあり、改めて農業大学校で農業を勉強することにしました。
- 萩野:
- 私も農業の道に進んだのはたまたまでした。小さい頃から自然が好きだったので、昆虫か植物の研究をしたいと思って大学に進学しました。でも、結局私も志望したコースではなく、たまたま進んだコースでの研究を活かす意味で、今の道に進んだといえます。
- 青柳:
- 私は大学では土壌の研究をしていました。土壌の違いが作物の生育にどのように影響するか、ということを日々調査していたので、おいしい作物を育てるコツを学んだというイメージはないのですが、今でも肥料の違いでどんな結果が出るか、なんていう比較も楽しんでやっているので、そのときの経験が身に付いているんだと思います。畑の土壌に合うおいしい野菜の種を探すことも楽しみの一つです。
- 萩野:
- ぶどう作りも、土地に合ったぶどうを探すところから始まります。基本は「ぶどうが喜ぶことをやる」ということ。ぶどうの実はぶどうの樹とそれをとりまく自然が作り上げるのであって、人間は手を貸すだけ。自然の力+目配り・気配りが私たちの仕事です。
- 青柳:
- 自然の力というのは私も常に感じています。当初は農薬をあまり使わない「減農薬」くらいを考えていたんですが、研修先でいただいた有機野菜がとってもおいしかったので、有機栽培に取り組むことにしました。有機栽培が大変だとよく言われるんですが、基本は自然まかせ。雑草も伸びたら刈るだけ。でも、品種・病気・土壌など、すべてを知らないとおいしい作物はできない。農業を勉強できるのが有機栽培だと思っています。
現在の活動
- 青柳:
- 近隣の農家さんたちと一緒に活動しているのですが、「北杜市で遺伝子組み換え作物をつくらない会」というグループを結成し、遺伝子組み換えの農業に反対する活動を行なっています。去年までまったく意識していなかったのですが、今年1月に参加した勉強会で、日本でも遺伝子組み換えの生産を行なっているという実態を初めて知ったんです。アメリカなどから遺伝子組み換えされた作物の種が輸入されて、知らずに生産するケースもあるかもしれない。もっと危険なのは、近所の畑遺伝子組み換え作物を生産していて、その花粉と私の畑の花粉が交配したら、組み換えられた遺伝子が入ってしまうということになります。とても他人事ではありません。だから、地域の人たちと結束して活動する必要があるんです。野菜は安全・安心で、その上でおいしくなければいけないと思っています。だから私は有機栽培にこだわっているんです。

- 萩野:
- 今年は初めて本格的な収穫を行なう年となります。現在は順調に生長してくれています。心配といえば、枝の生育が強すぎると、受精がうまく行かず、結実不良から粒の数が減ってしまったりする、そこだけが心配です。昨年一年間をここで過ごして、ぶどうの栽培には最高の環境であることはわかっています。恵まれない環境での作業は、ただただ育てることに意識が奪われてしまいます。でもここでは「どんなワインに仕上げたいか」をイメージしながら作業を行なえる環境があります。ここでのぶどうからはいいワインが仕上がって当たり前、地元だけでなく世界に認められるワインをつくることが目標ですね。
- 青柳:
- 私は農業大学校を修了後、県内2ヶ所の農場で研修を受けさせていただいて、ドイツにも1年間留学しています。帰国後、研修でお世話になった方からこの土地をご紹介いただいて、ここで有機栽培を始めました。湿気が少ないこと、日照時間が長いこと、昼夜の寒暖の差が大きいことなど、有機栽培には適した土地だな、と感じています。ぶどうの栽培でも同じことがいえますか?
- 萩野:
- 湿気が少ないことは病気の心配が少なくて済みますし、昼夜の寒暖の差はぶどうの着色や糖度をあげるのに適しています。ここは谷になっていて、夜には涼しい風が吹きぬける。ぶどうの栽培には理想的だといえます。ただ、農場を立ち上げるときには大量の石が出てきて大変でしたが。それも水はけという面で考えれば、プラスになっていると考えています。ドイツではどのような勉強をされたのですか?
- 青柳:
- ドイツでは有機栽培を勉強していました。20haの土地で野菜と家畜飼料作物を栽培し、10頭の牛を飼育している農場でした。ドイツでは土地1haにつき、牛を1頭飼育して、糞尿を堆肥にする、というのがルールになっています。とても印象に残っているのは、「計画通り」に物事が進んでいくということ。年間計画で「○月○日に苗を植える」という予定が決まっていれば、予定通りの数量の苗が入荷されて、間違いなく実行されるんです。私たちは、種探しから収穫まですべて自分で行なわなければいけないのですが、ドイツではすべての工程において担当する企業があって、無農薬で安全に育てられたものが農場に入荷される、大きなスケールで有機栽培に取り組んでいるという印象でした。そういえばドイツのワインは日本ではあまり見かけないような気がしますね。
- 萩野:
- ドイツのワインで思い浮かぶことがあるのですが、1950年代頃からのドイツでは白ワインを独特な製法で造り始めました。ぶどうを搾って果汁を取り出し、発酵させてワインを造るのですが、発酵の段階ですべての果汁を使用せずに、一部を残しておいて一旦辛口の白ワインを造ります。そこに残りの果汁を加えて甘口のワインに仕上げるという「ズース レゼルヴェ」英語で言うと「ジュース リザーブ」という製法です。とてもフルーティに仕上がります。これでドイツワインの名声がいっきに上がりました。しかし、最近は辛口ワインや赤ワインの人気が出てきたのか、以前に比べて辛口ワイン、赤ワインの造られる割合が増えてきているようです。
今後の目標
- 青柳:
- 収穫したものを袋詰めしてお店で売る、という流れでは、どういう環境で野菜が育っているかなどの生産の背景がお客様にはなかなか伝わらないんですね。なので、お客様が包丁持って畑に来て、「青柳さんキャベツもらっていくよ、今日のキャベツは大きいね」なんていう会話をしながら野菜に触れていただいて、畑で少しのんびりしてもらえるような、そんな形態を想い描いています。
- 萩野:
- 近隣でがんばっている方がいらっしゃるのはとても励みになります。今後も情報交換しながら取り組んでいきたいですね。
- 青柳:
- ヴィンテージさんにはレストランで野菜の取り扱いを始めていただいていますし、7月には「日本・ドイツ フードフェスタ」が開催されるということも伺っています。今後も私の活動とリンクする部分に関してはぜひ協力させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。