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第八回『世界のワイン市場と山梨産ワインの展望』
![[写真 左/右]ヴィンテージファーム総監修:志村富男氏(しむらとみお)/ワインハウスゲアハルト株式会社 東日本担当部長:吉川亨氏(よしかわこう)](/interview/008/images/img_image01.jpg)
各種ワインコンクールが開催される8月中旬。「世界に通用するワインを作る」というヴィンテージファームの目標について、まさに世界のワインを語るにふさわしい方との対談が実現しました。世界のワインを扱うワインハウスゲアハルト株式会社の吉川氏と志村総監修が、世界の中の山梨産ワインの可能性について、意見交換しました。
ワインに関する経歴

- 吉川:
- ワインハウスゲアハルトという会社は、ドイツでワインの醸造販売会社のグループ会社としてスタートしました。現在はドイツ・フランス・イタリア・スペイン・オーストリアなど、ヨーロッパ各国のワインを取り扱っている会社です。
私はワイン好きが講じて、また学生時代ドイツ語を専攻していた経験を生かせるということもあり、15年前に入社しました。
- 志村:
- 私はマンズワインに入社してからぶどう栽培一筋にここまできました。20年前にレインカット栽培を開発したことで、日本各地でワイン用ぶどうの栽培が可能になり、全国に広がっていきました。退職後は日本全国から声をかけていただいて、ぶどう作りのアドバイスをさせていただいています。
国産ワインコンクールの結果を受けて(注1)

- 志村:
- 結果を見ると、受賞ワインの大半が長野県のワイナリー。マンズワインが世界に通用するワインを作るために選んだ農場も長野にあります。日照時間や年間雨量を考えると、フランスの気候に似ているんです。当初は若干気温が低かったのですが、温暖化の影響か、今はぶどう栽培に最適といえます。昼夜の寒暖差も重要なポイントで、夜涼しい場所では植物もしっかり休息が取れる。だからおいしいぶどうが栽培できるんです。山梨県内の従来のぶどうの産地は、若干気温が上がりすぎている傾向があって、特に赤ワイン用のぶどうを栽培するのは難しい状況になってきています。そして、標高800mあるヴィンテージファームでは、ワイン用ぶどうの栽培を昨年春より取り組み、現在順調に育っています。
今回の受賞リストのもう一つの傾向としては、大手メーカーのワインが多いということ。大手は受賞作品を作るための担当者がいて、栽培されたぶどうの中から厳選された原料で、膨大な時間と人手をかけたワインがコンクールに出品されるので、強みはあります。
(注1:国産ワインコンクール2011結果はこちら)
- 吉川:
- 実は海外でも産地が変化する傾向にあります。従来、フランスのブルゴーニュやボルドーで醸造されたワインは多くの「特級」「一級」ワインを輩出しています。近年それ以外の産地からの受賞作品としては、北部のロアール地方のワインが増えてきました。以前は酸味が強すぎる地域だったのですが、気候の変化によって程よい酸味に旨みがプラスされた、「旨みがぼけていない酸」を感じさせるワインが醸造されるようになったんです。
また、ヨーロッパのコンクールでは、大手が必ずしも有利ではありません。ヨーロッパのコンクールは、粒選りだったりお手軽ワインだったり、階級別の審査が行なわれるので、ワイナリーの規模で有利・不利はあまり関係ないです。国内のコンクールもある程度基準を設けて、ヨーロッパのような公平な審査を行なうことで、世界のワインとの比較がしやすくなり、結果的に世界進出の道が開けると思います。
山梨県と、ワイン特区北杜市のワインの将来

- 志村:
- 山梨県は「ワイン王国」と言われた時代から、そのような展望をもってワインの生産を進めるべきでした。過去はおいしいぶどうが栽培されていたし、他の産地でおいしいワインが少なかったのでそれでも通用していたのかもしれません。でも、今回のコンクールを見ても分かるとおり、現在の状況はよくない。原因の一つは、吉川さんのおっしゃる通り、県内のワイナリーのほとんどが自社農場を持たずに農家さんからぶどうを仕入れて醸造している体制にあると思うんです。ぶどう作りは農家さんに任せて、自社では醸造のみを行なう、いわゆる「工場」的な生産を行なっているワイナリーがほとんどで、気候の変化に伴ってぶどうの改良を行なったり、別の品種を栽培したりするという対応ができていないんです。カベルネソーヴィニヨンやメルローといった人気のあるヨーロッパ品種を栽培しても、気候に合わないからおいしいものはできない。現状では世界に通用するワインというのは相当難しい。

- 吉川:
- ワインの専門家であれば、「このワインは工場的な醸造をされたもの」「このワインは丹念に醸造されたもの」という違いはわかります。カベルネソーヴィニヨンやメルローといった品種は確かに人気がありますが、品種に対するブランド意識は捨てて、地域にあった品種で、地域に合った醸造を行なう。これを行なうには工場的な生産体制では無理です。少量でもまじめにぶどう栽培から取り組むワイナリーに対してしっかりサポートできるような体制作りや考え方の普及が必要になると思います。
- 志村:
- 海外には小さな家族経営のワイナリーがたくさんあって、おいしいワインを作っている。甲州やベリーAといった品種でも、自社栽培で特徴は出せる。ぶどうを仕入れて作るワインでは、隣のワイナリーと違うものが作れるはずがない。汗をかいてワインをイメージしながら栽培することで、ワイナリーの大小関係なくおいしいワインは作れるはずです。ヴィンテージファームではヨーロッパ品種も栽培していますが、将来的に甲州ぶどうを無補糖でワインにできるくらい糖度を高めたものを栽培する予定です。まじめに栽培すれば実現可能だと考えています。
日本人のワインの好みについて
- 吉川:
- 試飲会を行うときは30種類くらい用意しておきます。いろんなタイプのワインがあるんですが、グループで来られる方は、その中で一番ワインに詳しい方が「おいしい」といったワインを全員が「おいしい」と評価する。有名な方が「おいしい」といったものを皆さん好んで飲まれる、そんな傾向がありますが、世界中にはいろんなワインがあるので、好みのワインを探して欲しいと思います。世界中のワインを飲んだら1つは自分に合うものがあるはず、と思えるほど、ワインの好き嫌いってあるはずなんです。日本人も他人の意見や品種、ブランドにふりまわされるのではなく、自分の主張ができるようになってはじめて、日本の市場も成熟するのかなと思います。醸造する側も、特定の好みの方にとことん喜んでもらえるようなワインを丁寧に作ることで、特長が出せるんだと思います。
- 志村:
- ヴィンテージファームもこの土地に合う品種で、この土地の食材に合うワインを作っていきたい。会員様に足を運んでいただいて、ワインに触れていただく機会を作ることが大切なんだと思います。そのためにも、ここでしか味わえないものを用意します。タンクから直接ジョッキに注いで、氷を入れて味わっていただくなんていう楽しみ方もできます。
今後のワイン市場について
- 吉川:
- 当社が考えている市場は、マスマーケティングではありません。会員様に向けて、我々が探してきたワインの素晴らしさを伝える、という方式です。本物のぶどうで丁寧に醸造しているという指針が見えてくれば、我々が考える本物のワインというものの選択肢に入ってくると思います。我々はそういうワインを会員様に選択肢の一つとして紹介することができるんだと思います。
- 志村:
- 醸造家が汗をかいて本物のワインを世に送り出すこと、そしてワインを楽しむ環境が日本に根付くことが、日本のワインのレベルアップにつながる。ヴィンテージファームの活動もそこにつながって、会員様の生活が豊かになったと感じていただけるように、これからも正直な取り組みを続けていきます。